宮崎駿の1970年代
1968年の「太陽の王子 ホルスの大冒険」を1975年頃にテレビ放映で見まして、とても興奮したのを覚えています。宮崎は場面設定で関わっているようです。監督はぼくが嫌いな「火垂るの墓」や「おもひでぽろぽろ」や「平成狸合戦ぽんぽこ」を撮った高畑勲。嫌いな理由は説教くさいからです。でも「ホルス」はすばらしいと思います。北欧を舞台に村落共同体が魔女の侵略を受けたときに村人はみずから立ち上がり反撃に成功します。黒澤明の「七人の侍」は農民が傭兵を金をだして雇うのにくらべても、テーマが民衆の自立と連帯にあることは明確です。1968年という学生の叛乱の季節に、あくまで職人や生活者の戦いが前面にでています。「カムイ伝」と双璧です。
「ルパン三世」(1971)「アルプスの少女ハイジ」(1974)「母をたずねて三千里」(1976)にも相当かかわっているようです。みんな好きな作品で再放送のたびに見ていました。1970年代のシニカルでペシミスティックな状況の中で、どこにも回収されない肯定性にあふれています。ルパンをニヒルに描いてもおかしくない設定にもかかわらず、陽気で愉快な人物に描き、孤児のハイジを陰気に描いてもおかしくないのに活発な少女に描き、イタリアからアルゼンチンに母親を探しにいく少年を負けん気の強い少年に描いています。3作品とも原作はもっと否定的な主人公だと思います。そうしたほうが文学的に描きやすいし、作品に重さがでるはずですが、3作品ともに明確な主題があります。
1978年の「未来少年コナン」と1979年の「ルパン三世 カリオストロの城」で宮崎駿は強烈な作家として登場します。高校1年・2年の時です。両方とも、現実には不可能な身体能力でジャンプしたり、落下したりするアニメ表現が随所にでてきます。そのことで後に論争にもなったようですが、この時はじめてアニメーションという身体移動を純粋に追及した作品が生れたことのほうが重要です。アニメはこのとき現実の重力からはじめて解き放たれたのです。
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